■あひるの空
第479話/雨雫
空達は視聴覚室で妙院の試合をみていた。
流石に上手い。
元々オフェンス重視のチーム。
そこに1年エースの加入で全国レベルの攻撃力を得た。
しかも厄介なことにこの1年はスタメンじゃないということ。
メインの主力と五分で渡り合えてもシックスマンに試合をかき乱されることになる。
2回戦の菖蒲も強かったが、妙院は更に強いとみて間違いない。
監督は百春が完全復活したとしても実力ではクズ高の数段上だとみてる。
ゲームが始まってからそれを知ったのでは遅い。
親しみのあった丸高とは勝手が違う。
この1週間でどこまで"対処"を想定できるかがキモになる。
「覚悟はいいな?」
モキチは学校を休んでも部活だけには顏をだそうとしていた。
どうやら風邪をひいてるようだ。
五月先生に遭遇した茂吉は「あまり無理をするなよ」と忠告される。
「気にしてるのか、昨日言われたこと」
・・・・・・・
・・・・
「おい。優しさで言ってやる。
オマエそのうち故障するぞ」
「負け おしみ」
菖蒲の選手に受けた忠告。
「ひねくれてんな。
鍛え方見直せ。来年までもたねーぞ」
・・・・
・・・・・・・・
「茂吉?」
「心配しなくても 壊れませんよ」
言われるまでもない。
課題は分ってる。
僕は体力ないし力もないから
フックだけをやり続けたんだ。
『ここからは飛び道具だけじゃ戦えない』
"変革"が必要だ
雨が降る外を学校の玄関で眺める女子生徒。
茂吉は目を奪われた。
「こんにちは茂吉先輩」
「こん にちは」
「3回戦進んだんですね。オメデトウゴザイマス」
「あり がとう」
「次の試合はドコでやるんですか?応援行きます」
「誰かと待ち合わせ?」
「あ、いえ、そうじゃないんですけど。
えーと雨!雨宿りをしてました。
降水確率100%・・・いやその何というか。
誰か間違えて私のカサ持ってっちゃったみたいで」
「それは 難儀」
「ハイ難儀ですね」
「じゃあそこに 置き忘れのモノを」
「ダメですよそんなの。
持ち主来たら困るじゃないですか」
「いや だって」
「仕方ない濡れて帰ります」
「・・・」
「では」
「僕のを」
「それじゃ先輩が帰れなくなっちゃいますよ」
「これは 予備だから。明日 返してくれれば」
「・・・」
「ナニ?」
「じゃあお言葉に甘えます」
「僕は 1組だ」
「知ってますよ。明日必ず返しに行きます」
「ハイ」
なんだこのラブコメは